企業は本当に8月から選考をするのか?
経団連の意向によって今年から就活のスケジュールが大幅に変わりました。
昨年までやっていた会社説明会の解禁時期を3年生の12月から3月へ、面接などの選考活動を4年生の4月から8月へと後ろにずらしています。
実際就活生として今まさにその変更されたスケジュールを体感している訳であります。
3月の会社説明会解禁はどの企業も割と守っていました。
3月1日からプレエントリー可能な企業がほとんどで、リクナビマイナビもこのタイミングで解禁され、大学で行われる説明会も3月でした。
では面接も予定通り8月から開始されるのでしょうか。
答えはNOです。就活やってる人であれば肌で感じると思いますが、企業はもう面接しています。内定すら出してる所もあります。
この点について以前から少し述べたい所があったのでまとめます。
倫理憲章の有効性
外資・中小・ベンチャーは関係ない
まず前提として、この新スケジュール、当然全ての企業に適用される訳ではありません。経団連に加盟している企業約1300社です。
参考までに日本に存在する企業は約420万社です。※総務省 「事業所・企業統計調査」(2006年)
「日本にある企業全体のたった0.03%だからほぼ意味ない」と主張する気は毛頭ありません。実際日本の有力な企業のほとんどは経団連に加入していますから、経団連の力は大きいでしょう。
それでも外資系、ベンチャー、中小企業は完全に適用外というのが事実です。
経団連加盟企業の中には最初から倫理憲章を守らないと言ってる企業がある。
さらに、経団連加盟=スケジュール遵守という訳ではありません。
経団連に加盟してる企業は全て倫理憲章の通りに選考していると思っている人も多いですが、実は経団連に加入していても、経団連が決めたスケジュールを守る必要がないのです。
経団連は加盟企業に、「倫理憲章の趣旨実現をめざす共同宣言」という形で参画を呼びかけており、賛同しているのは約1300社のうち、833社しか過ぎません。(2013年11月20日の時点)
これは新スケジュールに対する賛同ではありません。従来のスケジュールですが、経団連加盟企業のうち40%弱は反対しており、ハナから守る気がないという訳です。
倫理憲章は守らなくても何の罰則もない
さらにさらに、倫理憲章とは紳士協定であり、暗黙のルールのようなもので、違反したからといって一切の罰則はありません。罰則という罰則がなく、倫理憲章を破った事による企業側のデメリットは、強いて言えばブランドイメージの低下くらいでしょうか。そのイメージ低下もどの程度影響あるのか、正直疑問です。
倫理憲章について、意外と知らない人も多いのでまとめてみましたが、ここまでの話は新スケジュールとか関係なく、従来からの話です。
新スケジュール導入後の実態
政府の意図と大きく逸脱している実態
さて、本題です。
そもそもなぜ新スケジュールが導入されたのかというと、従来から問題視されていた「就職活動による学業の妨げ」と「就職活動の早期化」の解決を図るためです。
政府の考えとしては「3年生12月~4年生10月」じゃ早すぎるから「3年生の3月~4年生の10月」にして勉強に専念してもらおうって事なんでしょう。
いやアホかて。これ絶対「就活生は10月1日まで就活してる」と思って上で決めたでしょ。
今まで4月に大企業の面接があったので、3年生12月という早い時期から始まるものの4年生の5月には大体就活が終わってました。(実質5ヶ月)
今回は3年生3月解禁と、少し遅めた代わりに、面接も8月からなので8月で就活終わったとしても6ヶ月間の就活になり、結局就活の長期化を招いてるんですよね。
学業への影響はむしろ上がったと思います。確かに本番の面接では今まで4月という授業がある中で行われており、8月に面接やれば夏休みだから理論上学業に専念できると考えるでしょう。
しかし実際は面接解禁の時期が一番忙しいかと言えばそうではない。むしろそれまでのエントリーシートであったり、説明会、セミナー、OBOG訪問、筆記試験対策など面接始まるまでの方が忙しいくらいです。
従来の就活時期は3年生12月、1月、2月、3月、4年生4月って感じでした。
この中には冬休みと春休みが含まれており、実質半分以上休みです。
今年から新スケジュールになり、就活時期が3年生の3月、4年生4月、5月、6月、7月、8月になりました。
半分以上授業あります。そして4年生最後の夏休みが、自由に使える休みかといえば、そうではありません。理系の人は卒論を書く必要があったりと、学業への妨げはむしろ以前よりも酷くなっています
企業・学校・学生と3方向全てから、あまりに苦情が多いのでまた新スケジュールが見直されるらしいです。
新スケジュールを守っている企業はどこなのか
前のスケジュールに関しては、約1300社のうち、833社が賛同していると上で述べましたが、実は今まで経団連は、「倫理憲章」に賛同している企業名をホームページ上で公表していました。
しかし、今回の新スケジュールは賛同している企業名を公表していません。
逆に言えば、極論、どの企業も新スケジュールを守る必要がないのです。
それでも一応周囲の目を気にしてか、結構「面談」という形でごまかしている企業が多く見られます。
面談とは「企業が学生側にもっと色々会社の事を知ってほしいという広報の一種」らしいのですが、実態は紛れもない面接です。志望動機や学生時代に頑張った事など平気で聞いてきます。
従来も「リクルーター制度」という形で、本選考が始まる前から企業が学生に接触する企業は少なからずありましたが、リクルーター制度よりもたちが悪いです。
リクルーターは現場の人が多いですが、面談は思いっきり人事です。しかも面接官(面談官とかいうらしいです。レトリックで馬鹿にするのも大概にしろ)は相手2人とか複数の場合もあり、明らかな選考をしています。
実際8月から面接するのは商社と金融くらいなのではないでしょうか。
僕は商社と金融は受けてないのですが、エントリーした企業の8割くらいは既に面談か社員懇談会という形で面接みたいなのされました。
そうです、
8月1日からの選考活動解禁が形骸化しているのです。
これが実態です。メガバンクもどうやら赤は除いて青や緑は既にリクルーターや面談という形で学生と接触しているらしいですし、8月1日まで選考全くやらない企業って実はかなりマイノリティなのかもしれません。
「8月からと思って安心しきっていたら、内定が貰えないまま気付いたら全滅…」なんていう悲劇の学生も多く現れるかもしれません。
そうなったら残ったパイの奪い合いになるので、かなり地獄絵図になります。
内定式も10月1日と時間がないので8月の大手企業の選考が一通り終わった後、滑り止めとして抑えていた企業は内定辞退が続出し、9月頃に学生・企業共に焦り出すのではないでしょうか。
実は「日本の新卒採用制度」について卒論を書いてて結構言いたい事あったので今回書かせてもらいました。
新卒一括採用には良い所もあるんですが、やっぱり未完成な部分も多いです。だからこうして倫理憲章がコロコロ変わって就活のスケジュールがブレブレなワケですが。
「就職活動による学業への妨げ」や「就職活動の早期化」を真剣に解決したいのであれば、「新卒」という肩書きをとっぱらってしまえばいいと思います。
卒業してから就職活動できるような仕組み作り、むしろ全員が卒業してから就活するような社会でも極論いいと思います。(最近は政府が企業に「卒業後3年以内を新卒採用の対象に入れるよう働きかけてはいますが、まだまだ浸透してません)
それがないから、日本の大学生は遊ぶ訳です。いかにラクして単位を取るかしか考えません。別に遊ぶのがダメって訳ではありませんが、頑張って大学勉強してきた学生が必ずしも報われない社会ってどうなんでしょうね。
まあ僕は頑張って勉強してない大学生なので、第三者的な立場の意見です。
就職活動のシステムそのものを変える仕事に就きたい。